(ダメな意味で)パーフェクトな上司というのを見たことがある。
彼は仕事を与えた部下に対して、ことあるごとに実現方法を一から十まで説明を求めた。そしてかなりの頻度でこう言う。
「それ本当にできると思ってるの?」
これだけではまだ大した問題じゃないかもしれない。彼は、続けてこう言う。
●「できる」と回答した場合 → 「お前ができると言ったんだから責任とれよ」
●部下が仕事を達成した場合 → 「俺がああ言ったのに勝手にやりやがって…こんなもの成功のうちに入るか」
●部下が仕事を達成できなかった場合 → 「だから俺はダメだと言ったんだ」
もう、何がしたいのかわかりませんね。ダメ出しをすることだけが存在意義になっている。
閑話休題。
「それ本当にできると思ってるの?」この発言の何が問題か。
・仕事は生モノである。最初の段階で全て読みきって起こりうる事象全ての対策を立てておくのは無理。有名な一言はこちら。
こいつは将棋を指す時「詰み」まで読み切ってから始めるのか?
そんな超人いませんよね。だから「それ本当にできると思ってるの?」発言は愚かであるとしか。
続き。
・部下に失敗をさせない。失敗の程度にもよるが、リカバリ可能な失敗でも「だから俺はダメだと言ったんだ」と言うくらい失敗に厳しく、殺すと言わんばかりのプレッシャーを与える。実際は、リカバリ不能な失敗というのはほとんどない。
→ 「リカバリが利く失敗」ですら許さない雰囲気を出すことで、部下は些細な失敗すら犯さない綿密で多岐に渡って仕事を網羅している予定を立てるようになる
→ はっきり言ってその網羅性や綿密さは無駄。失敗したらさっさと次の方法を試す方が100倍早い。
また、そんな彼はこんな傾向があります。
・些細な計画変更を執拗に追及する
これも無駄ですよね。
「なぜ最初にわからなかったんだ!」 → 最初から全てを読み切ることはできない。読み切ろうとすると多大なコストがかかる。
「最初の計画を変更するのか!無理な計画を立てやがって!」 → 現状に合わせて方法を変えれば問題ないはず
「変更するんだな!その方法は本当に問題無いんだな!」 → だから何度も(ry
というわけで必要以上に計画変更を追及するのは無駄です。
ちなみに。彼の手口として、これだけの手をつくして上司に否定された部下はどうなるでしょうか。
「それ本当にできると思ってるの?」 → 「できません…」
と追い込まれます。これが実際には仕事を達成できるにも関わらず、部下を無能と自己申告させることで部下を追い込み、「できない部下のダメ出ししてる上司の俺カッコイイ!」と言いたいだけのパーフェクトにダメな上司の手口です。
さて、ここまでが前フリです。
何が「(ダメな意味で)パーフェクト」なのでしょうか。
山本五十六いわく、
やってみせ
言って聞かせて
させてみて
ほめてやらねば
人は動かじ
有名なことばですよね。
人を動かす(仕事してもらう)には、自ら手本を見せて、言って教えて指導して、実際にやらせて、誉めなければいけないというものです。
で、ダメ上司と言えば
やってみせ → 絶対に自分のやり方は晒さない
言って聞かせて → やり方は絶対に教えない
させてみせ → 「失敗したら殺す」と言わんばかりにやらせない
ほめてやらねば → 罵声オンリー
はい、パーフェクトですね。
というわけで、「それ本当にできると思ってるの?」という言葉を多用する上司は要注意です、という話でした。
■余談
同僚や上司など、同じ組織として仕事するはずの人が「オカシイ」人だと、戦場で背中から撃たれる感じです。それよりは、まともな同僚や上司と共同して「ヤバイくらいオカシイ顧客」とやり合う方が100倍は楽です。楽というかストレスが少ないというか。やりがいがあるというか。やる気が出るというか。